1999/ 4/16
2001/ 5/ 2


線種とLTSCALE

一点鎖線や破線を使えるようにするには

手書きで一点鎖線を引く時は、長めの実線、空白、短い実線、空白、長めの実線...という事を、始点と終点の間で繰り返します。
Auto CADでは、繰り返しがパターンとして登録してあって、パターンを始点と終点の間に敷き詰めることで、破線や一点鎖線などを表しています。

例えば一点鎖線はこのようなパターンが登録されています。
 これを繰り返すと、こうなります。



パターンは図形としてではなく、実線部分と空白部分の長さで定義されています。

新規に図面を開いた状態では線種パターンは図面内に存在していません。この状態では実線しか使えません。色々な線種を使えるようにするには、パターン定義が登録されているファイルから、パターンを読み込む必要があります。
定義ファイルにはたくさんの線種が登録されています。その全部をロードすることもできますし、必要な線種を選んでロードすることもできます。
一度ロードした線種パターンは、その図面内に保存されますので、元の線種ファイルをなくしてしまっても、きちんと表示、印刷されます。

あらかじめ用意されている定義ファイルのファイル名は AutoCAD LT ではACLT.LIN です。 レギュラー版の場合は ACAD.LIN がそれで、内容はどちらも同じものです。LT95からだと思いますが、ACLTISO.LIN というファイルが追加されています。(これについては後述)

定義ファイルはテキスト形式のファイルですので、エディターで内容を見ることができますし、修正、追加も簡単にできます。
定義ファイルは自分でも作れます。自作のファイルは拡張子を「.LIN」にして保存しておけばいつでもロードできます。保存先のフォルダはどこにあってもかまいません。
フォントと違って線種パターンは図面の中に保存されます。そのため、オリジナルの線種ファイルがなくても、違う環境で問題なく使えます。

線種パターンをきれいに表示するには

前述のように線種パターンは長さで定義されています。例えば実線が5、空白が2 というようにです。

新規図面を描く場合、「ゼロからスタート」で作図すると、空白の部分がつぶれてしまい、結果、実線にしか見えなくなってしまうことがあります。
これは線種パターンが小さいためなので、線種パターンの表示倍率を大きくしてやると、このような問題はなくなります。
この倍率に相当するのが「LTSCALE」という変数です。
先の例では空白部分が見えてくるまで倍率を高くしてやります。
図面の縮尺の分母の数字が大きい程、LTSCALE の値を大きくしてやるということになります。
具体的には、コマンドラインで「LTSCALE」とタイプします。すると現在の値が表示されて、新しい値を聞いてきますので、数字を入れてリターンを押します。

新規図面を開くと、LTSCALE は1になっていると思います。つまり、実寸の図面はLTSCALE は1、縮尺 1/100 の図面はLTSCALE は 100、1/500 なら 500と考えるのが合理的です。
とても簡単な仕組みです。ところが、この数値ではうまくいきません。

線種ファイルの謎

ACLT.LIN から読み込んだ線種をきれいに表示するのに、LTSCALE を幾つにすれば良いかをテストしてみると、LTSCALE=10 ぐらいを基準にするのが丁度良いようです。この場合は図面の縮尺が1/100 ならLTSCALE=1000、縮尺が1/500 ならLTSCALE=5000 になります。
これには異論があって、LTSCALE=10ではなく6だという人もいます。
どうもAutoCADはインチ単位で作図することを前提にしているようなので、それが原因でしょうか?
そうだとすると、1inch は 25.4mm ですから、インチをミリメートル系に変換する係数が 6 や 10 というのは変ですね。

AutoCADは単位を持たないCADです。長さ1インチの線はAutoCADにとっては長さ1作図単位の線です。
インチ単位で描かれた図面全体を25.4倍に拡大して、1作図単位(インチ)--> 25.4作図単位(ミリ)とすれば、寸法線が自動寸法なら寸法値も更新されて、簡単にインチ-->ミリの変換ができたことになります。
図面はこうして拡大できますが、線種パターンはそうはいきません。
インチで描かれた図面の線種パターンをミリに変換したあとも同じイメージで出力するには、線種パターンも25.4倍してやればいいですね。つまりLTSCALEを25.4倍するのです。
でも、こうしてしまうと、この先いつまでも25.4という数字に付きまとわれることになって何かと不便になります。

そこで登場するのが、ACLTISO.LIN という線種定義ファイルです。
線種をロードしようとすると、デフォルトのファイル名が ACLTISO.LIN になっている人が多いと思います。
この線種ファイルで定義されている線はACLT.LIN のパターンを単純に25.4倍したものです。
また、ACLT.LINで定義されているのと同じ数の線種が同じ名前で定義されています。
線種は名前で管理されていますので、ACLTISO.LINの線種を読み込むと、ACLT.LINの線種に上書きされます。
つまり、LTSCALEを25.4倍する換わりに線種パターンそのものを25.4倍してしまうことができます。
こうすることで、インチで作図していた時のLTSCALEがそのまま使えるという仕組みです。

参考書や雑誌では、ミリで作図するときはACLTISO.LIN を使うと言っているものもあります。
この時のLTSCALE の基準値は1/4 がいいそうです。図面の縮尺が1/100 ならLTSCALE=100/4、縮尺が1/500 ならLTSCALE=500/4 になります。

しかし、これはおかしいと思いませんか?なぜこんな妙な数字を覚えなければならないのでしょう?
縮尺 1/100 の図面はLTSCALE は 100、1/500 なら 500にというのが合理的な考えだと思うのですが。

そこで、AutoCAD に添付されている線種ファイルをもう一度見てみましょう。
例えば CENTER という線種に対して、 CENTER2 と CENTERX2 という線種があります。
これは、それぞれ CENTER のパターンを1/2 倍、2倍したものです。複写機で拡大/縮小したように、中の空白部分まで1/2 倍、2倍されています。
一点鎖線の棒線部分を長くしたり短くしたりと、使う場所によって変えるのは良くやることです。けれど、その時に空白や一点部分も長くしたり短くしたりするでしょうか?

CENTER
CENTERX2 <----これは見た目が変ですよね。

こうするのが図面のセンスではないでしょうか?

Auto CADの線種がなぜこんなにもセンスが悪いのかというのは、長いこと不思議に思っていました。

基本の線種パターンの他に、1/2 倍、2倍の線種を用意しているというのは、線種パターンの定義値を1/2 倍、2倍にすれば、線種全体の表示も1/2 倍、2倍になりますよ、ということを言うためではないでしょうか。
つまり、ACLT.LIN はカスタム線種を作るためのサンプルで、このまま作図に使うものではないのではないかと思います。
みなさんは、どうお考えになりますか?

さて、そう考えてくると色々と見えてきませんか?
オリジナルの線種ファイルには破線にしてもいくつか用意されていますね。LTSCALEをある線に合わせると、他の線ではどうにも見栄えが良くないという経験をされたことはありませんか?
私はLTSCALEは10がいいと言い、他の人は6がいいと言う。それは着目している線が違うからではないでしょうか?

Auto CAD の線はセンスが悪いと嘆いていると、家内がオリジナルの線種ファイルを作ってくれました。「線種ファイルのダウンロード」からダウンロードできます。

ペーパー空間を使う場合

最後にペーパー空間に用紙を描いて、そこから出力する場合のLTSCALE について。
ペーパー空間に描く用紙は実寸です。それをそのまま1分の1で出力しますから、LTSCALE は基準値そのままです。
線種ファイルにACLT.LIN を使うなら、LTSCALE=10。
ACLTISO.LIN なら、LTSCALE=1/4 でしょうか。
もう一つ設定しておくことがあります。
それについては、ペーパー空間について解説したページを御覧下さい。

(C) Yoshiyuki Inaba 1999-2001

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